台本

「チックタックと幻のチーズ」(0:0:2)

■登場人物■

●チック
(男女不問)
一人称:僕
楽観主義、何とかなると思ってる。
チーズが大好き。
金色の懐中時計が宝物。
ひらめきが得意。
他の鼠より長いしっぽがトレードマーク
探偵を目指している。
タックは友人兼助手だと思ってる。

●タック
(男女不問)
一人称: 俺
現実主義で心配性であわてんぼう
昔ねこにしっぽを半分かじられて
猫が大嫌い。
茶色のハンチング帽を被ってる。
夢は探偵になること。
チックは友人兼助手だと思ってる。

●あらすじ●

二匹のネズミ
チーズ大好き!食いしん坊でマイペースな『チック』と
臆病だけど、しっかり者の『タック』が

★幻のチーズ★の地図を手に入れた!

タックを無理やり引き連れて
チックは幻のチーズを手に入れるために
大冒険に走り出す!

ユーモラスな二匹のネズミが織りなす!
ハラハラドキドキな大冒険!

幻のチーズの正体とはいったい!?

ジャンル:ファンタジーコメディー
時間:約20分
男女比:男:0 女:0 不問:2

0:『タイトルコール』
 : 
タック:チックタックとー!
チック:幻のチーズ!
 : 
 : 
0:タック、路地裏をきょろきょろしながら走り回る。
 : 
タック:おーい! チックー! どこにいるんだー!
 : 
0:タック、せわしなくあちらこちらに首を突っ込んで
0:チックの名前を呼ぶ。
0:草の中、ゴミ箱の中、どぶの中、家の窓の中……
 : 
タック:チックー!
タック:おーい、チック! ここかい?
タック:チックってば! どこに行ったんだー?
タック:どこかに引っ掛かってるなら言ってくれー!
 : 
チック:タックー! 僕はここにいるよー!
チック:今、とてもいいものを見つけたところなのさ!
 : 
0:チックの声が少し遠くから聞こえてくる。
 : 
タック:チック! 一体君はどこにいるんだい?
チック:上を見てごらんよ!
タック:うえ?
 : 
0:タックが上を見ると、煙突のある家の屋根の上で、チックが手を振っている。
 : 
チック:ここさ! タック!
チック:早くおいでよ! いいものを見つけたんだ!
チック:まったく! やっぱり僕は運がいいネズミだ!
 : 
タック:俺をおいて駆けていったと思ったら
タック:どうしてまた、そんなところに!
タック:今行くから待っててくれ!
 : 
0:タック、排水管や洗濯紐などを駆使して、家の屋根までするすると登っていく。
 : 
チック:タック! 来たね! 壁を登るのはやっぱりうまいなあ!
タック:排水管があったからこれくらい楽勝さ!
タック:それで、いいものって何だい?
タック:どうせ君の事だから、チーズなんだろう?
 : 
0:チック、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりの表情。
 : 
チック:よくぞ聞いてくれた!
 : 
0:ついには口に出してしまうくらいの、自慢の表情で
0:手に持っていた何やら紙切れをタックの顔前に見せびらかす。
 : 
チック:ほら! これを見つけたのさ!
タック:なんだい、これは。黄ばんでいて汚いなぁ。
タック:チック、落ちてるものを何でも拾う癖、俺は治した方がいいと思うぞ。
チック:なんてことを言うのさ! タック!
チック:これを見てすぐに分からないとは、君はネズミの風上≪かざかみ≫にも置けないな!
タック:こんなに目ん玉の近くで見せられたって、分かりっこないやい!
タック:ちょっと下がって見させてくれ
 : 
0:タック、二・三歩後ろに下がり、チックがひらひらと、ひらめかせているものを見る。
0:タック、首をかしげる。
 : 
チック:どうだい! すごいだろう?
タック:なんだい、これは。
タック:黄ばんだ汚い紙じゃないか。
 : 
0:チック、怒ってほっぺたを膨らませる。
0:チックは頬袋が大きいので、それはそれは大きなほっぺたである。
 : 
チック:もう! タックには何を見つけても見せてやらない!
チック:どんなチーズも、おすそ分けなしで全部僕が食べてやる!
タック:チック……! 悪かったよ! そんな怒らないでおくれよ!
タック:でも、本当に、俺には何かわからないんだ! 
タック:チック、よかったら教えてくれるかい?
 : 
チック:しかたないなあ!
チック:そこまで知りたいなら教えてあげよう!
タック:悪いね! 助かるよ。
 : 
0:チック、両手で紙をもって、タックに分かるように見せる。
 : 
チック:これは、『幻のチーズ』の地図さ!
タック:わお、それはすごいや(棒読み)
チック:すごいだろうとも! これはすごいことさ! タック!
タック:それで、その……
チック:どうしたんだい? タック、君も興奮してきただろう?
タック:その、幻のチーズと言うのは何だい?
チック:ええぇー!? 君は幻のチーズを知らないのかい!?
 : 
0:チック、びっくりして目が飛び出す。
0:屋根から落ちそうになる目を拾って元の位置に戻す。
 : 
チック:めんたま落っこちるかと思ったよ! タック!
チック:幻のチーズを知らないネズミがこの世にいるなんて
チック:タック、君はモノを知らなさすぎるのではないかい?
タック:俺は今、すごくバカにされているね?
チック:僕はとても驚いているのさ!
チック:『チューチュー盗賊団のクロック団長』が隠した、とっておきのチーズを知らないなんて!
タック:クロック団長!? またおっかない名前が出てきたなあ。
 : 
チック:そうさ! あの、どんなチーズも盗んじまう盗賊団の団長が
チック:最も大事に貯蔵しているチーズなのさ!
タック:そ、それはなんだかすごそうだぞ。
タック:でもチック、そんなすごいチーズなら、クロック団長は手元に置いておくんじゃないのか?
チック:君は本当に幻のチーズを知らないんだなあ。(あきれたように)
 : 
0:チック、煙突を登る。
0:満月を背景に、逆光でチックのシルエットが浮かび上がる。
 : 
タック:どうしたんだい、チック。
タック:突然煙突なんかに登ったりして。
タック:落ちないように気を付けなよ、満月の明かりがあるとはいえ、暗いんだから……
チック:クロック団長は、そのチーズがとても大切だったのさ!
タック:Uh-oh≪おっおー≫(驚いたように)
タック:突然しゃべりだしたね。
チック:だから、チーズを誰にもとられないように、隠したんだ!
タック:そんな、隠してあるなら見つけようがないじゃないか、チック。
 : 
チック:ちっちっちぃー!(腰に手をあて、短い人差し指を振りながらどや顔で)
タック:俺は間違いなくバカにされているね?
チック:そんなことないよ! 相棒をバカにするわけないじゃないか!
チック:タック。クロック団長はとても恐ろしく、威厳のあるネズミだけど
チック:とっても忘れっぽくてね、自分が隠したチーズを忘れないように
チック:メモを残していたのさ!
 : 
タック:チック、君はチーズの事になるとよくしゃべるね。
タック:いつもは俺が話しかけても、ずっとチーズを食べてもごもごしているのに。
チック:もう、タック! 今いいところなのに余計なことを言わないでくれるかい?
タック:悪かったから、その大きな頬袋を膨らませるのはやめておくれ
タック:君は頬袋が大きいから、まるで威嚇≪いかく≫されてるみたいだ。
チック:君がいけないんだからな!
タック:わかったから……。
タック:それで、そのメモがどうかしたのかい?
 : 
チック:えっと、どこからだっけ……
タック:チック、君も相当忘れっぽいよね。
チック:そうだ! ……メモを残していたのさぁ!(大げさに)
タック:な、なんだってー!(わざとらしく)
チック:クロック団長は、メモを大事にしてたけど、なくしてしまったんだ!
チック:これは噂だけど……今でもクロック団長は、そのメモを探して歩いているとか。
タック:もしかしてだけど、そのメモっていうのが……
チック:タック! 君は勘が鋭いね! そう!
チック:そのメモが、この地図なのさ!!(ばばーん!)
チック:風に飛ばされ、飛んできたんだ!
 : 
0:タック、それを聞いて慌てて煙突の周りを走り回る。
 : 
タック:これは大変だ! 大変なことじゃないか!
タック:もしクロック団長に見つかったら、たまったもんじゃない!
タック:チック! その地図はほら、煙突の中にでも捨ててしまいなよ!
チック:何を言うんだい! タック!
チック:僕は決めたぞ! 幻のチーズを見つけに行く!
チック:クロック団長なんて怖くないさ! ただの忘れん坊だからね!
タック:チック……! 君がチーズが大好きなのは俺だって知っているさ。
タック:でも、危険だよ。俺は反対だ!
チック:大丈夫さ! 僕たちならあっという間だよ!
タック:ええ!? それって俺も一緒に行くってことかい?
チック:当り前じゃないか! 僕と君は、二匹で一匹だろう?
チック:幻のチーズを見つけたら、ちゃんと半分はタックにあげるさ!
 : 
0:タック、ぷるぷる震えながら、煙突の上を見上げる。
 : 
タック:わかったよ、君がやる気を出すことなんてめったにないし
タック:チック。今回は俺が君に付き合ってあげることにしよう……
タック:この上なく嫌な予感がするけどさ……
チック:タックゥ! 君ならそう言ってくれると思ったよ!
 : 
チック:さあ! そうと決まれば、行こう! タック!
タック:チック……! 君のその、チーズがかかっているときの行動力には驚かされるけど
タック:今日はもう遅いし、明るくなってからにしないかい?
 : 
0:タック、両手で自分の肩を抱いて周りをきょろきょろしてぷるぷる震える。
0:チック、対照的に、自信に満ち足りた表情で、月を指さす。
 : 
チック:今日みたいな満月の夜にだけ、そのチーズは現れる。(自信満々)
タック:……え?
チック:この地図にそう書いてあるんだ! 探すなら、今日ってことさ!(どや顔)
チック:ほら! 行くよ、タック!
チック:地図によれば、ここからそう遠くない!
タック:え……でも……。
チック:まったく、タック! 怖いのかい?
タック:お、俺がそう簡単に怖がるわけがないだろう!
 : 
0:チック、煙突から飛び降りる。
 : 
チック:……よっとぉ!
チック:タック! 君がこんなことで怖気づく≪おじけづく≫わけないよね!
タック:もちろんさ! もちろんだろうとも!
チック:よし! 地図によれば、あそこに見える森の中にあるみたいだ!
タック:あそこかい? 想像していたよりずっと近くて助かったよ……!
チック:でも、満月が沈むまでにたどり着かなくちゃ! 急ぐよ! タック!
タック:わかったよ、チック。
タック:俺は覚悟を決めたぞ! なんでもかかってこーい!
チック:タック! 行こう!
タック:行こう! チック!
 : 
0:町の中を走る二匹のネズミ。
0:路地を抜け、枯れたどぶを越え
0:近道に空き家を通り抜け……
0:二匹は、森の近くまで走ってきた。
0:満月が沈むまで、もう時間がない。
 : 
チック:(息を切らせて)……結構かかったね。
タック:(息を切らせて)……君が近道で通った空き家で、寄り道をするからだろう。
チック:チーズのにおいがしたんだ!
タック:まったく! 満月がもうじき沈んでしまう時間になっちゃったじゃないか!
チック:これは大変だ!
 : 
タック:チック、君の目的のためなんだ!
タック:慎重に、かつ大胆に行こう! もう時間もないことだし!
チック:ようし! それじゃあ……ええと。
タック:地図にはなんて書いてあるんだい?
チック:森の絵の真ん中に、大きな木のマークが書かれてる。
タック:……それだけかい?
チック:その木に、星印が書かれてるから、きっとここさ!
タック:わかりやすくて助かったね! これなら月が沈むまでにたどり着けそうだ!
 : 
チック:急いでいこう! ここからは時間との勝負だからね!
チック:幻のチーズが、僕らに食べてもらうのを待ってるのさー!
タック:俺が先を歩こう。もし何か異常があったら伝えるよ!
チック:なんでさ? いつもみたいになんで走れば、いいんじゃあないかな?
タック:君は今、とても興奮しているから、危険にとても鈍感だろう?
タック:君が先走るのを止めないといけないんだ。俺が!
チック:僕は先走っても慌てる事なんかないさ! タック、君とは違ってね。
チック:でも、わかったよ。君が僕のことを思って言ってくれているのはわかってるからね。
タック:よし、それじゃあ慎重に行こう!
チック:大胆にね!
 : 
0:二匹が、森の中に走っていく。
0:目指すは森の中心にある大きな木。
0:途中、タックがぴたりと走るのをやめてチックを制止する。
 : 
タック:(息を切らせて)チック! ちょっとまって!
チック:(息を切らせて)なんだい、タック。もう疲れたのかい?
タック:これを見てくれ、ほら、その杉の木の下の地面。
チック:……チーズでも、落ちていたの?
 : 
0:タック、地面を指さす。
0:チック、その方向を見ると、ネズミの足跡が二匹分見当たる。
 : 
タック:わかったかい? これ、ネズミの足跡で間違いないよ。
チック:どうやら、タックの言う通り、ネズミの足跡みたいだね。
タック:二匹分あるよ。俺たちより先に、この森に二匹のネズミが入り込んだんだ。
チック:幻のチーズを探しているのかな……
タック:だとしたら、先を越される前に!
チック:チーズを見つけ出さなきゃ!
チック:こうしちゃいられない! 早く行こう!
タック:おっかないネズミだったらどうしよう!
タック:念のため……いい感じの木の棒を拾っておこう。
チック:タック! 何をしているのさ! 早く行こうといっただろう?
チック:君のその、落ちてるものを何でも拾う癖は常々やめた方がいいと思っていたんだ!
タック:護身用に木の棒を持っておくのさ! おっかないネズミとばったり会ったら大変だからね。
チック:ばったり会ったら逃げればいいのに!
タック:お守りみたいなものさ!
タック:さあ、いこう!
 : 
0:二匹は他のネズミの足跡に不安を覚えながら
0:森の中心に向かって走っていく。
 : 
チック:タック! 見えてきたよ! あの木じゃないかな!
タック:チック! まさにあの木で間違いないよ! とても大きな木だ!
チック:あとちょっとだ! タック! もうすぐ幻のチーズとご対面だよ!
タック:先を越されてないといいけどね……!
チック:それも見てみればわかるさ! 行こう!
 : 
0:二匹はこの森の中心にある、ひときわ大きな木の前で立ち止まる。
0:荘厳ないでたちのその大木は、二匹からしたら化物のようにすら思えるほどだった。
 : 
タック:(息を切らして)やっと着いた! この辺は走りづらい場所が多すぎるよ……
タック:それにしても、恐ろしいほどに大きな木だね、チック。
チック:星印が付いていた木はこれで間違いない! どこかに、ヒントになりそうなものはないかな……!
タック:ヒントになりそうな……? 少し気の周りをまわってみるよ。
 : 
0:タック、大木の周りをくるくる回り、何かを見つけ、声を上げる。
 : 
タック:チックー! 来てくれ! 何か文字が書いてあった!
チック:なんだって! すぐ行くよ!
タック:ええと、どれどれ……『俺様のチーズは、夜空に隠した。-クロック-』……だって。
タック:これってどういうことだい?
チック:タック! 少しは君は自分の頭で考えた方がいいと思うよ!
タック:何を言っているのさ、チック。
タック:俺は自分の考えを持ったうえで、君の意見を聞こうとしているのさ!
チック:さあて、どうだかなあ。
チック:でも、さすがの僕でもさっぱりわかりやしないや。
チック:こんな大きな木のふもとに書いてあるってことは、これを登れば何かわかるかもしれない。
タック:俺もおんなじ考えさ! きっとこの木を登れば何かわかるはず!
 : 
0:タック、木に足をかけて、チックを見る。
0:チック、そんなタックを見る。
 : 
チック:タック、君は登るのが得意だったね。
タック:チック、俺一人で行って様子を見てきてほしいと言うんじゃないだろうな?
チック:さすがタック! 僕が考えていたことをそのまま言ってくれるんて!
タック:チック、俺と君は二匹で一匹だ。
タック:困難も、一緒に乗り越えよう!
 : 
チック:僕は木登りはあまり得意じゃないのさ……
タック:太ったからかい?
チック:うるさいやい! 登ってやろうとも! 僕にだってできるはずさ!
タック:まあでも、無理はしないでくれたまえよ!
チック:そうだ! もし万が一落ちてもいいように……この辺りのつたを使って……!
 : 
0:チック、器用につたを使って、トランポリンのようなものを作る。
 : 
タック:君は本当に器用だなあ。
タック:つたでトランポリンを作ってしまうなんて。
チック:これで、もし落ちてしまっても大丈夫だろう!
タック:ようし、今回は君から先に登ってくれ! 俺は後から登るよ。
チック:わかった! ちゃんとあとをついてくるんだぞ!
タック:なんだか心配だなあ。
 : 
0:チック、えっちらおっちらと木を登り始める。
 : 
チック:うんしょ……よいしょ……
タック:本当に大丈夫かい? 俺がお尻を押してあげてもいいけど。
チック:君は加減を知らないからよしておく! 自分の力で登るさ!
チック:幻の……チーズが……僕を待ってる……!(登りながら)
タック:まったく、チック。
タック:君はチーズが関わると人が変わったようにたくましくなるなあ。
タック:俺もじゃあ、後に続くよ。……っとぉ。
 : 
0:チックがえっちらおっちらと登る後ろを、タックがひょいひょいと登る。
0:時々チックのお尻を押してやったりする。
 : 
チック:タック! 今僕のお尻を押したかい?
タック:チック! 君の進みがゆっくりだから、少し力を貸そうとしたのさ。
チック:君の力がなくても大丈夫……これくらい、へいちゃらさ!
タック:どうだかなあ。
 : 
チック:よいしょ……こらしょ……
タック:チック! もう半分を超えたよ! もうひと踏ん張りだ!
チック:なんで……君は……下を見る余裕があるんだい……タック……!
タック:木登りは得意なのさ!
チック:タック、君。実は……リスなんじゃないか?
タック:何を言うのさ……! 俺は正真正銘、ネズミ色のネズミさ!
チック:にわかには信じがたいなあ……! 
 : 
チック:よいしょ……っと……!
チック:もうちょっとで登り切れるぞ……!(この後落ちます)
タック:大変だ! 木のふもとに変なネズミが二匹、こっちを見上げてる!(この後チックと一緒に落ちます)
チック:え!? それは大変だ! ……あ
 : 
0:チック、驚いた拍子に手を放してしまう。
0:チック、落ちる。
0:真下にいたタックにお尻が直撃。
 : 
タック:チック! 手を放したら……! ぐえっ!
タック:(チックのかわいらしいお尻が顔面に直撃して落ちる)
 : 
0:チックタック、落ちます。
0:同時に叫べなかったら、代表でチックが叫んでください。
 : 
チック:うわあああああああああああ!!!!(同時に)
タック:うわあああああああああああ!!!!(同時に)
 : 
0:チックが作ったトランポリンの上に落ちる。
0:みょーんってトランポリンが沈んで、勢いよく二匹を跳ね上げる。
0:その拍子にタックが持っていた木の棒が飛んでいき、木のふもとにいた変なネズミの一匹に直撃する。
 : 
タック:トランポリンのおかげで助かったけどーーーー!
チック:跳ね返って空にすごい飛ばされてるよおおおおお!!!
タック:うああああああ!!! 死にたくないいいいいい!!!
チック:……!!! タック! 僕わかったよ!(飛びながら)
タック:何が分かったんだい! チック!!(飛びながら)
チック:幻のチーズのありかだよ!!(飛びながら)
タック:それはすごいやああああああ!!!(飛びながら)
 : 
0:彼方に飛ばされた二匹のネズミは、満月の上に乗っかる。
0:タックは目をまんまるにさせ、チックは目を輝かせている。
 : 
タック:……うわあっと、え、これはなんだい!? 
タック:俺たち、満月の上に乗っかってるのか!?
チック:……よっと! やっぱり! 僕の推理は正しかった!
タック:チック、これはどういう事なんだ!?
チック:タック! この満月こそが、幻のチーズだったんだ!
チック:僕らが見上げていた満月は、チーズだったんだよ!
タック:そんなバカな! でも、確かにこの月……チーズのにおいがする……!
チック:僕たちは見つけたんだ! 夜空に隠された幻のチーズを! 食べ放題だ!
 : 
0:チック、満月をちぎって口に運ぶ。
0:目をとろんとさせて、涙を流す。
 : 
タック:チック……そんな、泣くほどうまいのか?
チック:うまぁい……うまいよぉタックぅ……!(泣きながら)
タック:じゃあ俺も……ぱく。
タック:口の中でほろりと崩れて、風味が爆発する……。
タック:この香りが……涙腺を直接刺激して……こりゃあうめえ(涙を流す)
 : 
チック:(ひたすらムーンチーズを食べる)もぐもぐもぐもぐもぐ
タック:チック……いくら何でも食べすぎなんじゃ。
チック:大丈夫さ! 僕の胃袋は君の4倍だからね!(もぐもぐ)
 : 
0:間
 : 
0:二匹が満月を食べまくって、三日月になっている。
0:三日月に二匹の満腹ネズミが寝転がっている。
 : 
タック:満月が三日月になっちゃったね。
チック:……げふ
タック:チック! きたないぞ!
チック:さすがの僕でも、全部は食べれなかったよぉ
タック:月が無くなったら、みんな驚くからこれくらいでよかったのさ。
チック:空から見る街も森も、なんだかいいものだね、タック。
タック:俺たちは、今もしかするといろんな奴らに見られてるのかもしれないね、チック。
チック:もうすぐ夜明けだよ、タック。月が沈む前に飛び降りなきゃ!
タック:ようし、それじゃあ、一緒に飛び降りよう。
チック:月が沈む直前なら、地面が近いもんね!
タック:いくぞー!
 : 
チック:いち!
タック:にの!
チック:さーんっ!(同時に)
タック:さーんっ!(同時に)
 : 
 : 
0:おしまい
 : 
 : 
0:—続く。

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